契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――二十五歳の娘に、まともに働かない四十半ばの酒癖が悪い暴力男を勧めるなんて、親としてどうなの……!

 通常なら考えられない暴挙だろう。
 だがあの土地では罷り通ってしまうのだ。
 適齢期なのに未婚の娘がいることの方が、よほど恥ずかしいという価値観故に。
 むしろ地元で力がある家に嫁げて幸せねと、本気で思っている節もある。

 ――いくら何でも冗談じゃない……! そりゃ両親は私が内気で、交際経験もないのを心配しているのは理解できるわ。でもあんな人と結婚するくらいなら、独り身でいた方がずっとマシ。

 結婚すれば、即介護だ。本家にはニート同然の長男だけでなく、気難しい両親と寝たきりの祖父母がいる。
 それだけでなく小姑も二人同居中。
 歯に衣を着せず言ってしまえば、最悪の条件を煮詰めたのと大差なかった。
 とは言え、そういう考えを持つのは、希実が数年でも都会に出て価値観をアップデートできたからだ。
 あのまま大学に進学することなく地元で就職していたら、早々に近場で結婚相手を探していた可能性が高かった。そして義実家で同居コース。
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