契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 そしてまだ理解できないでいる希実の手を引いてきた。

「丁度キャンセルが出たそうだ。希実は運がいい。買い物はその後にしよう」
「えええ?」

 有無を言わせぬ強引さで、希実は商業施設を連れ出された。
 東雲の友人が経営しているという店は、ビルが建ち並ぶ道を数本行った先にあり、本当に近い。
 とは言え今だ疑問符だらけのまま。
 理解できないうちに、何故か希実は髪を整えてもらうことになったのだ。

「待つ間に、僕だけで事足りる用事は済ませてくるよ。希実が終わる前には戻ってくるから、安心して」

 そう言って彼は店を後にした。
 お洒落最先端な美容院に一人置き去りにされた希実は、気が気ではない。
 幸いなのは、他に客はおらず、不必要に話しかけてこない美容師が心地いい雰囲気を作ってくれたことだった。
 そうでなかったら、希実は居た堪れなさのあまり地蔵状態になっていたかもしれない。
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