契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「つ、次ってどこへ……」
「当初の予定通りドレスを見よう。既にいくつか候補を選んできた」
「あ……それで席を外していたんですね」

 なるほどと頷く。そんな希実へ視線を向けてきた彼が、意味深に口角を上げた。

「……ちゃんと首筋の痕を隠してくれる髪形にしてもらったんだね。――まぁ、美容師にはバッチリ見られてしまっただろうけど」
「ぇ……? あぁっ!」

 そのことをスッカリ忘れていた希実は、往来にも拘らず大きな声を上げてしまった。
 バタバタして失念していたが、そもそもキスマークを隠すには髪を下ろすしかなく、しかし癖がついて嫌だという流れで、突如美容院へ連れてこられることになったのだ。
 確かに今の状態なら、赤い痣は隠せているし髪は綺麗にセットされている。
 だがしかし、だ。

 ――確実に、あの美容師さんには見られていた……!

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