契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 夢見心地のまま歩けば、先刻は周囲の視線が気になって気後れしていたのに、今度は少しも意識に上らない。
 繋がれた手の感覚に全てを持っていかれ、他は雑音に過ぎなかった。

「希実が気に入らなければ、遠慮せずに言ってほしい」
「い、いいえ。東雲さんが選んでくださったこれがいいです」

 彼がいくつかピックアップしてくれたドレスの中から気に入ったものを選び、その足で他の服を選びに行く。
 東雲が選択肢を絞ってくれたおかげで、希実はまごつかずに済んだ。
 ドレスなんて、正直なところ何を基準に決めればいいのかまるで未知の世界だ。そこに靴や鞄、アクセサリーまで合わせるとなると、もはや異世界の話も同然。
 膨大な数の中から選んでいいと言われたら、希実は困り果ててしまったに違いない。
 ショップスタッフの助けも借りて決めたドレスは、よく分からないなりに気に入った。
 非日常の買い物は、少なからず心を浮き立たせる。しかも終始東雲が希実をお姫様のように扱ってくれたことで、一度も不安に襲われることはなかった。
 勿論、その後のショッピングでも、彼は希実のためだけに色々なものを選んでくれた。
 憧れてはいても袖を通す勇気がなかった愛らしいワンピース、遊び心のあるパンプスに、通勤にも使える鞄。使い勝手のよさそうなネックレスと着回しの利くアウター。
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