契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 圧倒的にインドア派の希実は、外出自体疲れてしまうことが多い。
 いくら楽しみにしていたイベントや、親しい友人との食事でも、最終的には『家が一番ホッとする』と思うのだ。
 何なら悪意なく『早く帰りたい』と考えてしまうこともある。
 決して楽しくなかったわけではないものの、人ごみに疲弊して次の日のことが気にかかってしまうのだろう。
 けれど今日は、そんな発想は出てこなかった。
 それどころか、まだ帰りたくない。
 特別な一日をもっと味わいたいと熱望していた。

 ――東雲さんといられるのが楽しくて……

 彼は希実の歩幅に合わせ、喉が渇いたり脚が痛んだりする前に休憩を挟んでくれる。
 連れて行ってくれるお勧めの店は、どこも希実の趣味に合っていた。
 話題は尽きず、面白い。
 こんなにも話していて気が楽になる異性は、東雲が初めてだった。『知れば知るほど新しい魅力が見つかる』のはこちらの台詞だ。
 全く底が見えない彼の魅力に、希実はどんどん惹かれてゆくのを止められなかった。

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