契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
翌週、花蓮が平然と出社してきたことに、蟠りがなかったと言えば、嘘になる。
希実だけではなく、他の同僚も同じ気持ちだったのは想像に難くない。
だが『体調が優れなかった』と言い切られれば、それ以上話題にするのを躊躇われる空気になった。
それに、一応は有給の範囲内だ。
諸々周りに迷惑が掛かったとしても、面と向かって彼女に文句を言えばパワハラと訴えられかねない。
しかも後ろに父親である常務が控えているとなれば、尚更だった。
結局、ろくに連絡もないまま何日も欠勤したことはうやむやになり、これまで通りの様相を呈したのだが――
「――ふぅん。少し見ない間に随分印象が変わったのね?」
希実を意地悪く上から下まで眺め回し、花蓮は尊大な態度で腕を組んだ。
とても体調不良で寝込んでいたとは思えない色艶で、化粧にも服装にも隙はない。何なら以前よりも髪や爪の手入れは行き届いていた。
「……髪を切って眼鏡をやめただけですよ?」