契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 無遠慮な視線に委縮しかけたが、希実は懸命に背筋を伸ばし、深呼吸した。
 こちらが卑屈になる必要はないという気持ちと、『以前の自分とは違う』という僅かな自信。
 その二つが希実を支えてくれていた。

 ――私だって……前よりも少しは強く変われたはず――

 コンタクトにし、新しい髪形に変えた評判は上々だった。
 通勤服も、『家で洗えるスーツ』と『アイロンいらずのブラウス』から適度にトレンドを取り入れた華やかなものになっている。
 脳死状態で選んでいたグレーや黒白の色味から、今期流行のカラーを身につけ、足元はヒールが低めかつ歩きやすい上質なパンプス。
 薄く施された化粧は、プロのメイクアップアーティストに手解きを受けた。
 ビューラーやマスカラも今では使いこなせている。
 首元には派手過ぎないダイヤの一粒ネックレスを飾り、これまでとは比べ物にならないほど希実はあか抜けていた。
 どのアイテムも、奇抜さややり過ぎ感はない。
 しかし東雲チョイスの全てが、洗練された魅力を放っている。何よりも希実によく似合っていた。
 出社してすぐに、普段さほど懇意にしていない女子社員から褒められたくらいだ。
 男性陣からの視線も、まるで別物。
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