契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「飯尾さんがそんなことを?」

 彼がジロリと花蓮を見やる。東雲の双眸には冷たい焔が揺らいでいた。そのことに、彼女も気が付いたらしい。

「な、何で私をそんな眼で見るの? 私は東雲さんを思って……」
「それで根も葉もない嘘で、妻を傷つけたのか?」

 希実が聞いたことのない冷ややかな声に、問われたのは自分でなくとも背筋が震えた。
 大声で威嚇したり、あからさまな脅迫を織り交ぜたりしたのでもない。
 けれど人を委縮させるのには充分な威圧感を伴っていた。
 東雲の怒気を直接向けられた花蓮ならば、尚更だろう。
 彼女は絶句して、再び顔色が悪化した。

「なるほど。だいたいの経緯が呑み込めた」
「あ、あの……今、根も葉もない嘘って……」
「一つ確認したい。希実は彼女の戯言を信じたのか?」

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