契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「さっきも言った通り、友達だよ。同志みたいなものだ。確かに子どもの頃婚約の話もあったけど……僕ら自身が望んだことではない。両親だって我が子が夢を追うことに納得したから、話は流れた。ただ明確に『婚約破棄』となると双方外聞が悪いから、公にしなかったんだが……もしかしてそれが希実を誤解させた?」

 彼の言動に後ろめたさはまるでなかった。
 よほど演技の天才でもない限り、信じていいと思える。いや、信じたいと希実は心の底から願った。

 ――私は飯尾さんの言葉よりも、東雲さんを信用したい。

 結果、騙されることになったとしても。
 愛しい人のことを疑って、自分自身がボロボロになっていくより、信じる心を失いたくない。

 ――それに万が一、彼の心が元婚約者へ傾いたとしても――私だって愛してもらえるように頑張ればいい。

 そんな努力もせずに嘆くばかりでいたくなかった。
 希実は数度深呼吸し、少し離れた場所に立つ花蓮に視線をやる。彼女は、居心地悪そうにチラチラと扉を見ていた。
 おそらく逃げ出すタイミングを探っていたのだろう。
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