契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「先ほどエントランスホールでのことは、大勢の人が目撃しました。中には口が軽い人がいるかもしれません。貴女が事実ではない東雲さんの不貞を主張していたのは、沢山の方が見ていましたよ」
これまでの花蓮は、巧妙に希実だけを攻撃していた。
他者には気取られないよう、『分かる人には分かる』方法で。
陰湿ではあったが、それはいくらでも言い逃れが可能なやり方だ。
希実が気にし過ぎだと言い切られればそれまで。けれど先刻の一件は軽率だった。
あれではとても『私は無関係です』は通らない。さしもの常務も、娘の愚行をなかったことにはできないだろう。
大っぴらな処分が下されなかったとしても――人の口に戸は立てられないのだから。
「……希実の言う通りだ。いくら何でも穏便に片付けられないな」
「し、東雲さんっ」
焦った様子の花蓮が、愕然とする。
重々しく告げた彼に、本気で突き放されたことは伝わったようだ。
だが東雲の冷淡な眼差しは、もはや取り付く島もなかった。
これまでの花蓮は、巧妙に希実だけを攻撃していた。
他者には気取られないよう、『分かる人には分かる』方法で。
陰湿ではあったが、それはいくらでも言い逃れが可能なやり方だ。
希実が気にし過ぎだと言い切られればそれまで。けれど先刻の一件は軽率だった。
あれではとても『私は無関係です』は通らない。さしもの常務も、娘の愚行をなかったことにはできないだろう。
大っぴらな処分が下されなかったとしても――人の口に戸は立てられないのだから。
「……希実の言う通りだ。いくら何でも穏便に片付けられないな」
「し、東雲さんっ」
焦った様子の花蓮が、愕然とする。
重々しく告げた彼に、本気で突き放されたことは伝わったようだ。
だが東雲の冷淡な眼差しは、もはや取り付く島もなかった。