契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 さも正論のように言い切られ、ほんの数秒『そうかも?』と思いかけたが、希実は慌てて首を横に振った。

「いいえ、解決していません!」

 危うく騙されるところだったが、言い包められてなるものか。
 未だにベッドで抱き合うことも慣れないのに、いきなり二人で入浴はハードルが高過ぎる。
 希実にはとてもじゃないが『いいアイディアです』とは返せなかった。

「は、恥ずかしいじゃないですか……っ」
「だからこそだよ。僕は君を信じるし許すけど、ほんの少し意地悪をしたくもなっている。何せ妻に不貞疑惑を持たれたんだからね……そのショックは配慮してほしいな。希実が悪いと思ってくれているなら、僕の我が儘を聞いてくれてもいいじゃないか」

 強引な論法だ。
 詭弁と言っても過言ではない。
 だが痛いところを突かれた希実は、言い返せずに口籠った。
 束の間の沈黙が落ちる。
 ニヤリと笑う東雲に抱え直され、希実は成す術なくバスルームへ運ばれた。

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