契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 馬鹿げた話に囚われ、惑わされてしまうほどに。

「会えない間、毎日希実を想っていた」
「電話はしていたじゃないですか」
「顔を見て声を聞けば、余計に会いたくなる。希実は?」
「私だって……!」

 恋しさが一層募った。だから辛かった。
 初めての恋に振り回され、一番大切なことを危うく見失いそうになっていたのだ。

「東雲さんが好きだから、寂しくて不安になるんです……」
「ごめん。君にそんな気持ちを抱かせた僕が悪いな。これからは馬鹿げた嘘が入り込む隙もないくらい、希実に愛情を伝えるから許してくれ」

 彼に非は全くない。それなのに謝ることで、希実の罪悪感すら引き受けようとしてくれた。
 あまりにも懐が広いところを見せられて、より愛おしさが増す。
 きっとこの先、東雲以上に希実が愛せる人は現れない。
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