契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 どうにもその点が引っかかっているのか、彼は探る眼差しを希実に向けてきた。

「協力関係を結ぶなら、互いの目的を把握していて損はありません。当然、正当な対価が介在してこそ、対等な共犯者足り得ませんか」

 真剣で誠実な瞳だ。
 東雲の立場なら、希実にもっと上から命じることもできるだろうに、そうはしない点に好感が募る。
 この場で弱いのは、明らかにこちら。
 だがあくまでも上下をつけるつもりはないらしい。
 とは言え、『希実を信頼しているから』が理由でもないのは、やんわりと伝わってきた。
 彼は希実を疑っている。東雲には理解し難い言動が不可解なのだろう。
 もっとシンプルに信じてくれればいいのにと思わなくもないが、希実は彼の背景やら人柄やらを思い遣った。

 ――こういう立場の人だと、心配なのかな。変に言い寄ったり利用しようとしたりする人もいるのかもしれない。――少し、可哀相。

 つい同情してしまう希実はお人好しだ。
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