契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――人は見た目で判断してはいけない……でも、限度がある。

 やや興奮気味に希実が己の気持ちを吐き出すと、東雲が軽く眼を見張った。
 たぶん、引かれている。人の悪口を並べ立てる女に嫌気がさしているのかもしれない。
 しかし一度口をついた鬱屈は、簡単には止められなかった。
 これまで希実は誰にもこの件について話せなかった分、思う存分本心をぶつけられる相手を見つけ、心が軽くなったのは否めない。
 吐き出す場所のない靄が、急激に晴れていった。

「こ、こんな話をされても安斎さんが困るのは分かっていますが……ごめんなさい、本当は誰かに聞いてもらいたかったんです……っ」

 気持ちが昂り、涙ぐむ。
 必死に呼吸を整えて泣くまいと頑張り、希実は拳を握りしめた。

「両親に言っても、私の気持ちは理解されないと思います。結婚が一番の幸せという価値観があの田舎にはある……安斎さんにはとても信じられませんよね? でも都会を離れると、昔の常識がまだまだ罷り通ってしまうんですよ」

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