契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 ――色々緊張し過ぎていて、周りを観察する余裕もなかったな……今やっと、店内の内装が眼中に入った気もする……

 そもそもこういう場へ出入りすることには不慣れだ。
 けれど希実の感覚からしても、いい意味でこの店は丁度良かった。
 いつも行く飲食店とは比べ物にならないほど高級なのは間違いないが、如何にもな仰々しさはない。
 とてもシンプル。
 さりげなく置かれた調度品は高価に決まっているが、希実に場違い感を抱かせない絶妙な居心地の良さも提供してくれた。

 ――よく見ると小花柄の壁が可愛いから? 接客してくれるスタッフの方が、にこやかな笑顔で感じいいおかげかな……?

 どう見ても東雲の『オマケ』でしかない希実に対してもぞんざいな扱いは決してせず、スタッフは穏やかに料理の説明をこちらに向かってしてくれる。
 飲み物が提供されるタイミングも完璧だった。

 ――やっぱり安斎さんはいいお店に出入りしているのね……それに、ひょっとして私に合わせてくれたのかな……?

 あまり格式張った店に連れていかれたら、希実は食事どころではなかった可能性が高い。
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