契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 だからこそある程度カジュアルな店へ連れてきてくれたのだと考えるのは、深読みし過ぎか。
 鬱憤を吐き出してスッキリしたのもあり、希実は勧められるまま前菜を口に運んだ。

「……美味しい、です」
「それはよかった。一応コースを頼んでありますが、食べられないものがあれば言ってください」
「いえ……好き嫌いはありません。それに、本当に美味しい……あ、これも想像とは違う味ですが、サッパリしていて食べやすいですね。私、とても好きです」
「気に入ってもらえたなら、嬉しいな。――佐藤さんは控えめであまり好き嫌いを口にしないタイプかと思っていたから、安心しました」

 確かに希実は自らの意見を述べることに消極的だ。特に親しくない相手には、気を遣い過ぎて疲れてしまうこともある。
 そういう快活とは言えない面を指摘された気がして、どう返事をすればいいのか分からなくなった。

 ――食べ物の好みはまだしも、そういえば私ついさっき本家の息子さんの悪口を言ってしまった。……呆れられてしまったかもしれない……

 東雲が黙って聞いてくれたから、調子に乗ったのは否定できない。
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