契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 口にしなくてもいいことまでぶちまけたと気づき、遅まきながら後悔が滲んだ。

「す、すみませんでした……」
「どうして謝るのですか?」

 てっきり不快感を与えてしまったと思ったのだが、彼はそんな様子はなく首を傾げた。
 優雅にフォークを動かす仕草が、非情に様になっている。
 ただ食事しているだけなのに、不思議な色気が希実を戸惑わせた。

「え、ぁ……面白くない話を聞かせてしまいました」
「いいえ、面白かったですよ? 佐藤さんの為人を知ることができました。貴女は上っ面ではなく、根が純粋で優しいのですね。普通、あり得ない条件の結婚話を持ちかけられたら、もっと怒って当たり前です。たとえ相手が親であっても、佐藤さんが自分を殺して人生を捧げる必要はありません。でも簡単に割り切れず罪悪感を抱くところが、貴女の良さであり脆さなのかなと思いました」

 柔らかく細められた眼差しが希実を見つめる。
 そんな風に言ってくれる人がいるのは想定外で、一瞬動揺が隠せなかった。

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