契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
「罪悪感……」
「ええ。佐藤さんはご両親の言いつけに逆らうことへ、迷いがあるようです。違う考え方を持っていても、幼い頃に植え付けられた価値観を心の底では完全に払しょくできずにいるのではありませんか」

 あまりにも図星で、息が乱れた。
 希実の根底にあるものを見抜かれている錯覚がする。
 両親や地元の考え方に染まっていないつもりで、いざ本当に背を向けようとすると『もしかしたら自分が間違っているのかも』という疑念がこびりついて剥がれない。
 呪いに似た存在に、ようやく思い至った。
 だからこそ縁談を断ればいいだけの話を、ぐちゃぐちゃ悩んでいるのだ。

「……言われてみたら、その通りです。私……母たちにガッカリされたくなかった部分もあります……」

 このまま一人で頑張っても、家族はきっと褒めてくれない。そして希実自身、満たされない日々と向き合い、いずれ地元の価値観に呑み込まれるのが恐ろしかったのではないか。
 どちらに転がるにしても、覚悟が足りないから。
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