契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 サクサクと聞かれ、思わず住所を従順に答えてしまった。
 希実の処理能力を超えたせいもある。
 東雲が素早くカーナビを操作するのを、呆然としたまま見つめていた。

「案外遠くから通勤されていたのですね。毎日大変だったでしょう。部署内でいつも一番に出勤されるのに」
「は、早起きは得意ですから……ぇ、私の出勤が早いことをどうしてご存じなんですか?」
「ふふ。それよりシートベルトを失礼します」
「え……っ」

 意味深に微笑んだ彼がこちらへ上体を伸ばし、希実にシートベルトを装着させた。
 その際、二人の距離がこの上なく接近する。
 まるで抱き合っているかのような近さに、一瞬希実の息が止まった。
 鼻腔に漂う爽やかな香り。他者の熱。自分を覆う大きな影。
 それら全部が希実から冷静さを奪う。慌てふためいて逃げようにも、下手に身じろげば身体が触れてしまいかねない。
 掠めそうで接触しない――そんな僅かな空間が希実を赤面させた。

 ――心音が響いちゃう……!

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