契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 お気遣いありがとうございますと言うべきか。
 それとも余計なお世話と返すべきなのか。
 一瞬悩んだものの、疲れているのは彼も同じだ。しかも忙しい東雲の方が希実よりも肉体的精神的に疲労困憊しているのが確実だった。

 ――それなら、東雲さんを余計に煩わせる方が申し訳ない? ここは大人しくするべき? いっそ荷造りは私一人ですると申し出て……いや、同居自体先延ばしにする方法はどこかにないの?

 グルグルと考え、頭の中がパニックになる。
 まだ、具体的な二人の生活なんて考えていなかった。
 婚約期間を限界まで引き延ばし、その間に心の準備をするつもりだったのだ。
 それなのに怒涛の展開で『今でしょ』状態になり、脳が機能停止に陥っている。
 無様にも希実にできるのは、百面相しながら思い悩むことだけだった。

「……ふ、希実さんはコロコロ表情が変わるんですね。可愛いな」
「か、かわ……ゃ、それより先ほどのお話ですが……本気で私と同居するつもりですか?」
「今僕が住んでいるマンションも部屋は余っているから問題ありません。ただ――バスルームやトイレは一つずつですが」

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