契約結婚、またの名を執愛~身も心も愛し尽くされました~
 東雲の休みが調整できず、希実の田舎へ行くのは来月以降を予定していた。
 既に結婚する旨について話はしてあるが、『お嬢さんをください』『はい』の儀式をしにいくためだ。
 だから新居探しはその後だと、希実は油断していたのだと思う。
 物件を決め引越しし、本当に『契約結婚』するのはまだ先だと――

「希実さんの言うことは、尤もです」
「ですよね。だったら……」
「明日、会食の予定が入っていましたが、キャンセルします。他のスケジュールも変更可能なので希実さんのご両親に会いに行きましょう」

 東雲の決断が早過ぎて、眩暈がした。

「い、いやっ、ですがうちの家族の予定がつかないかもしれません」
「土日両方とも終日多忙ですか?」

 正直に言えば、一流企業の最前線で働く彼よりも希実の両親が忙しいとは思えなかった。たぶん、いや高確率で時間は作れる。
 何なら暇を持て余している。
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