塩系男子のステルス溺愛 クールで無愛想な義兄が、なぜか私にだけ甘すぎる件
 床の上に小さなテーブルが用意されていて、そこに座るように言われた。たすくの部屋は自分の部屋とは違うにおいがして、男の子の部屋に入るなんて初めてだからドキドキしてしまう。ただ父親に頼まれていやいや時間を作っているのに。
 
「数学、得意なんだな。英国はもうちょっと頑張れ」

 わからないところは、丁寧に教えてくれたのが意外だった。これぐらいできて当然だろとか言われると思っていたから。

「あの、時間作ってくれてありがとう」
「そこでもっかい解いたら、声かけて」

 たすくはたすくで自分の机で勉強していた。海の底へ降りていくような集中力の深さにつられて、ひなたも自然と没頭できた。
 カリカリとシャーペンの音だけが響く部屋で、別々のことをしているのに、なんだか同志みたいな気持ちになった。
 なんでもできて当たり前に見えたたすくが、実は相当努力していることも気づいた。ただ頭がいいからできるんだなんて、よく知りもしない人間が結論づけるのは間違っていることも。
< 61 / 311 >

この作品をシェア

pagetop