前世恋人だった副社長が、甘すぎる
ゾワゾワっとして身震いする私に、
「違うことないだろ」
甘ったるい低い声で告げる。
この人は、いちいちどうして色っぽいのだろう。私の心を甘く溶かして楽しんでいるのだろう。
「今日だって、秘書として同行させた訳ではない。
俺の婚約者だと紹介するつもりだ」
確かに結婚を前提として付き合うことになったが、性急過ぎるのではないか。
だいいち、プロポーズさえも受けていないし、キスだって軽いものを一回しかしたことしかない。
そして、仮に怜士さんと結婚したとしても上手くいくのか不安で仕方ない。
怜士さんは私をクリスチーヌとして扱うのだろうし、私がクリスチーヌとあまりに違うと冷めてしまうかもしれない。
私は黒崎怜士という人に惹かれ始めているのに、怜士さんは菊川穂花を見てくれないのだろう。
「行こうか、穂花」
怜士さんはまた私の背中に手を回し、エスコートしてくれる。
こんなスマートな怜士さんに、私はきゅんきゅんして止まないのに……