前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「悪いね、菊川さん。これは手切れ金だ」
社長はそう言って私に札束を突き出した。
見たこともない厚さの札束、おそらく数百万円はあるだろう。
私は、
「いえ。いただくことは出来ません」
それを突き返した。
そして深々と頭を下げてエレベーターへと戻る。
心の中が空っぽになった、涙さえ出ない空虚な気持ちだ。
「穂花!」
エレベーターに乗る直前、怜士さんの必死の叫び声が聞こえた。
だけど、怜士さんを振り返るのはやめた。
だって、怜士さんを見ると戻ってしまいそうになるから。このまま駆け落ちしようと言ってしまいそうになるから。
今世初めての恋だったけど、辛い辛い恋だった。