前世恋人だった副社長が、甘すぎる



まず、婚約者である私に見向きもしない。

怜士さんの使いの男性が持ってきたお菓子も、私と一緒に食べてくれない。

そもそも、私のほうを見ないのだ。

おまけに、私に向かって

「お前、秘書だろ。仕事しろ」

なんて失礼なことを言う。

秘書だというのは表向きの理由で、怜士さんの隣にいるだけでいい、そう黒崎社長にも言われたのに。



気を取り直して仕事をしようにも、何をすればいいのか分からない。

だから何となくパソコンを触っていたら、怜士さんの大切なファイルを消してしまったらしい。

すると彼は私に怒ることもなく、私の存在を黙殺した。

これほど辛く悲しいことはなかった。

怜士さんは、愛する女性と引き裂かれたことに、必死に抵抗しているのだろう。

可哀想だと思うが、それが運命。仕方ないのだ。


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