前世恋人だった副社長が、甘すぎる
「はじめはなんて夢だろうと思った。
その男に苛立った。普通しないだろ?
身分階級がある時代に、貧しい男がお嬢様を連れ出すなんて。
挙げ句の果てに、お嬢様は彼の身代わりになって死んでしまった」
怜士さんは私を見ることはなかった。
ただ、口元をきゅっと結んでフルーツを切る。
「でも、毎日毎日見るんだ。
愛する人が自分のせいで死んでしまうところを、毎日毎日……
そして毎日毎日、教会の前で祈り続けた。
いつの間にか俺の中にはその男が居座っていて、寝ても醒めても彼女のことばかり考えるようになっていた」
フルーツを切るナイフが止まる。
そして、その手は震えている。
「会いたい……会えるはずもないけど、どうしても会いたい。
前世の俺が屋敷から彼女を連れ出さなければ、彼女はもっといい男性と幸せに生きていたのに。
……彼女を殺したのは、俺だ。
今、あの時代に戻れるのなら、必死で彼を止めるのに」
フルーツが皿に落ちた。
彼は下を向いて、泣いているのかもしれない。
だけど、私は思う。
「彼女……幸せだったと思います」