前世恋人だった副社長が、甘すぎる
副社長はイラついたように扉を見ていたが、部屋が静かになると次第に落ち着いてきたようだ。
しばらく沈黙が続き、私の鼓動はキュンキュンドキドキと音を立てる。
副社長なんて好きでもなんでもないはずなのに、この胸の音はなんだろう。
やがて副社長は静かに告げた。
「菊川さん、どうぞ召し上がってください」
副社長に促され、紅茶を飲む私。
ティーカップを持つ私の手を、副社長は目を細めて嬉しそうな顔で見る。
そんな目で見ないで欲しい。私だって今置かれている状況を必死で理解しようとしているが、頬がにやけてしまうから。
だけど、副社長がマルクという確信はないし、仮にマルクだとしても今は別の人生を歩んでいるのだから。