前世恋人だった副社長が、甘すぎる
私はもちろん営業スマイルなのだが……女性社員はまだ私が気になって仕方がないらしい。
哀れみと興味が入り混じった視線を送ってくる。
だから思わず聞いてしまった。
「副社長って、そんなに怖いんですか?」
すると彼女は一瞬どきっとした顔をして、辺りをきょろきょろ見回す。
そして、人がいないことを確認してから小声で話し始めたのだ。
「怖いって次元ではないです。
副社長はいつも冷めていて表情もなくて、別名能面の副社長です」
その言葉に吹き出しそうになったが、しーっと制される。
彼女はギャグを言ったつもりではないようで、そのまま真顔で続けた。
「常に冷めた顔をしていて、人が失態を犯すと情け容赦なく切るんです。
副社長秘書は精神を病んで辞めるか、副社長の機嫌を損ねて切られるか……副社長秘書だけではなく、私たちみんなもです。
この前なんて、『クリスチーヌとマルクの物語』について雑談していたら、副社長が急に来て本をゴミ箱に捨てられました。
そして表情一つ変えずに言うのです、『死ね』と」