前世恋人だった副社長が、甘すぎる



なんだか思うようにいかない私は、気を取り直して怜士さんのスケジュールを見る。

今日は比較的ゆっくりした一日だが……


「今日は午後六時から『若手経営者の会』です。

主催はうちなので、お土産を用意しますね」

とは言ったものの、今まで庶民として生きてきた私は、副社長の手土産に相応しい店なんて知らない。

先ほどの女性社員の話によれば、怜士さんは田川さんの用意した手土産が気に入らず、福島県の老舗まで買い直しに行かせたこともあるとか。

パワハラにもほどがある。



それなのに、

「よし、じゃあ買いに行くか」

怜士さんは立ち上がり、自分で買いに行こうとするものだから、私のほうが慌ててしまった。

かばんをひったくって飛び出そうとする私に、

「お嬢様は使い走りなんていかなくてもいいんです」

まるで、あの時のように告げる。

私にクリスチーヌを重ねられていることにムッとして、

「お嬢様じゃないですから!」

手を振り払って部屋を出ようとした。



触れられた手が熱く、火傷してしまいそう。

顔からだって、火を吹きそう。

だけど胸はズキズキ痛む。

私がクリスチーヌの生まれ変わりでなかったなら、怜士さんは私を好きにはならなかっただろうから。

……そう、もはや私はマルクではなく、怜士さんに惚れている。


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