凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 いつもひとりで食事をしていたため、ルーリアは落ち着かなくて立ったままでいると、今度はカルロスが椅子を引いて「ほら座れ」と促してくる。
 そこまでしてもらったなら座らない訳にもいかず、「はい」と小さく返事をし、ルーリアは椅子に腰掛けた。
 カルロスもルーリアの隣に座ると、壁際に置かれてある彼の背丈ほどの高さがある柱時計へちらりと目を向ける。

「俺は食事を終えたら一度外に出る。用が済んだらすぐに帰ってくる予定だが、俺がいない間、何か困ったことがあればエリンを頼るように」
「はい。わかりました。お気を付けて行ってらっしゃいませ」

 食事を乗せたワゴンを押して戻ってきたエリンは、女性に対して冷めた態度しか取ってこなかったカルロスが、気遣いの言葉を発していることについつい笑みを浮かべる。
 しかし、続けてエリンはルーリアへと視線を移動させぎょっとする。よく見ると、ルーリアが着ている寝巻きは、ところどころ繕ったような跡もあり大変粗末な物だったからだ。
 本当にバスカイル家のお嬢様なのよねと、本日何度目かの疑問を頭に浮かべて激しく動揺しながら、エリンはカルロスとルーリアの前にサラダとスープを並べ置いた。

「奥様、食事の後、屋敷の中を案内しますね」
「ありがとうございます。お願いします」

 ルーリアは恐縮しながら返事をした後、スープから立ち上る湯気をじっと見つめた。

(温かなスープなんて久しぶり。サラダも瑞々しい)

 たくさんの種類のパンやハムエッグなどエリンによって次々と並べられていく食事にルーリアが目を奪われていると、カルロスが思い出したように忠告する。

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