凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「……ああそうだ。準備が整うまで、俺がいない時にルーリアを屋敷の外に連れ出すのは絶対に禁止だ。庭も同様。彼女の命に関わることだから忘れるな」
「い、命だなんて」
そんな大袈裟なとばかりにエリンが呟くが、それを聞いていたセレットが口を挟んだ。
「お嬢ちゃんなら有り得る話だ。闇の魔力の影響を受ければ均衡が崩れて取り込まれる。大人しく屋敷の中にいた方が懸命だろうな」
「……闇の魔力ですって!?」
セレットの言葉を聞いて、エリンが忌々しそうに声をあげる。それが闇の魔力に対する一般的な反応であり、ルーリアは現実に引き戻されたような気持ちとなり、顔を俯かせて拳を握りしめる。
「それも、時が来るまで口外するな。屋敷の者たちの間で留めておくように」
カルロスにぴしゃりと命じられても、理由が分からぬエリンは納得できない様子で再び口を開こうとする。しかし、ルーリアの華奢な体がわずかに震えているのに気づいてしまえば、それ以上聞くことが出来なくなり、諦めるように短く息をついた。
「薄々感じておりましたが何か訳ありなのですね。承知いたしました……さあ、お話はこれくらいにして、奥様、召し上がってくださいな」
エリンに促され、ルーリアはスープに手を伸ばし、器に指先が触れた瞬間、嬉しそうに呟いた。
「とっても温かい」