凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
その程度で喜んでいるルーリアに、彼女のこれまでの境遇をそれぞれが察し、エリンは胸の痛みを覚えて顔を歪め、カルロスは苛立ったようにムッと顔を顰めた。とはいえ、それをルーリアには見せずに、ふたりはすぐさま表情を元へ戻した。
そんな様子には気付かずに、ルーリアはスプーンで飴色のスープをそっと掬って口に運ぶと、表情を一瞬で明るくさせた。
「美味しいです!」
「そう言ってもらえて嬉しいです。たくさん有りますから、お腹いっぱい食べてくださいね」
ルーリアはエリンに「ありがとうございます」と感謝の言葉を述べてから、ひと口ひと口噛み締めるように食事を進めたのだった。
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カルロスは手早く食事を済ませると、ルーリアに「行ってくる」とだけ告げて食堂を出た。自室に戻ると、着慣れた騎士団の黒の制服を身に纏い、魔法石の入った小箱をポケットに入れ、そして婚姻契約書を掴み取る。
これから頼み事をすることに対し少しだけ気の重さを感じつつも、颯爽とした足取りで屋敷を出て、愛馬に跨って騎士団の詰め所へと向かう。
すれ違う団員たちから「おはようございます」と次々と声を掛けられながら廊下を進み、執務室の前で足を止めると、短く息をついてからドアをノックした。
「失礼します」
応答がなかったがドアノブを回せば扉が開いたため、ひと言断ってから室内に入った。ソファーに腰掛けて、手に持っている筒状の婚姻契約書に視線を落とせば、カルロスの脳裏にアズターがひとりで訪ねてきた時の記憶が蘇ってきた。
庭園前から屋敷の居間へと移動したところで、早速アズターが口を開いた。
「単刀直入に言います。私の娘を嫁にもらっていただけませんか?」
「は?」