凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
まさかそんな話をされると思っていなかったカルロスは冷たくひと言返し、じろりと睨みつける。それにアズターは怯んだ様子を見せるが、すぐに強い眼差しでカルロスを見つめ返した。
「あなたに頼みたい。どうか娘の、ルーリアの命を救って欲しい」
ここ最近、カルロスは騎士団の任務で町を巡回している時、頻繁にアメリアに遭遇している。その度にあれこれ誘われ、うんざりしていたところに嫁の話を持ち出されたため、咄嗟に頭に思い浮かんだのが妹の方の顔だったのだ。
そういった理由でたっぷりと棘を含んだ声を返してしまったのだが、アズターの口から出た名前はルーリアで、思わずカルロスは動きを止める。
「俺は医者じゃない。命を奪うことは簡単だが、救うことは出来ない」
「では、ルーリアの命をあなたに預けたい。私はこのまま、あの子を失いたくない」
「それはどういうことだ」
「……内密でお願いします。ルーリアは出生時に、黒精霊から祝福を受けました」
わずかに声を落として告げられた事実にカルロスは息をのみ、目を瞠る。
「バスカイル家は光の魔法の名家として名を馳せ、光の魔術師としても最高位の地位を得ており、その高い信頼のもと、回復や浄化などの仕事を請け負い、生成した魔法薬も高値で取引しています」
騎士団でもバスカイル家から購入した魔法薬は貴重品扱いで、誰でも気軽に使用できるものではなく、カルロスはアズターの言葉を認めるように軽く頷く。