凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「そのため、一族の中に穢れた力とされている闇の魔力を宿している者などいてはならないのです。誰にも知られないように、ルーリアを必死に隠してきました。しかし、ルーリアの光の魔力の暴走が頻出し、それに比例して闇の力も増幅し始め、正直我々の手に負えなくなってきている」

 カルロスの脳裏を掠めたのは、幼き日の別れ際に見た光景だ。ルーリアへの態度が粗雑だった理由を知り、思わず拳を握りしめた。

「闇の魔力に飲み込まれれば、黒精霊だけでなく闇の魔術師も呼び寄せてしまうだろう。だから、危惧していることが現実となる前にと……娘はもうすぐ一族の手によって消されます」

(いくらなんでもそこまでするはずは……)

 そう考え、小さく笑い飛ばそうとしたが、どこまでもアズターの表情は真剣で、嘘でも誇張でも無いのだと受け止めるほかなく、カルロスは表情を強張らせた。

「私はルーリアに生きていてほしい。先日のパーティーでの活躍を目にし、勝手ながら、娘が囚われている祝福という闇の鎖を断ち切れる強さを、あなたなら持っているような気がして、こうしてお願いに参りました」
「そこまで万能ではない。勝手に期待してくれるな。預かったところで、目の前で闇の力に飲まれでもした場合、俺はその命を確実に奪いに行くが良いのか?」

 厳しい口調で覚悟を問うと、アズターはハッと息をのんだ後、力強い眼差しをカルロスに返した。

「その罪は私のものです。娘もひとりでは旅立たせません」
「……少し考えさせてくれ、返事は近いうちに必ず」

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