凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 カルロスが考え込むように瞳を伏せると、アズターは大切なことを言い忘れていることを思い出し、付け加えた。

「それから、もうひとつ言っておかないといけないことが、実は私たち夫婦だけで留めておいたことなのですが……」

 そこで、居間の扉がぱたりと開きエリンが顔をのぞかせたため、アズターは口を閉じた。

「まあお客様! 気付かずにすみません、今すぐお飲み物をお出ししますね」
「いえ。すぐにお暇させていただきますので、お気遣いなく」

 慌てるエリンにアズターは幾分表情を和らげると、首を横に振って丁重に断りを入れる。そして、カルロスへと近づき言いかけたことを小声で告げる。
 驚きで大きく目を見開いたカルロスへと、アズターは「事実です」と弱々しく笑う。そして、「何卒よろしくお願いいたします」とカルロスに深々と頭を下げると、そのままジークローヴ邸を後にしたのだった。




 考えるとは言ったが、その時にはもうすでにカルロスの心は決まっていた。ルーリアを引き受けることに少しの抵抗も覚えなかったためだ。
 その二日後、カルロスはアズター・バスカイル宛にルーリアを嫁にもらうと返事をしたのだが、なぜかその返答が二通戻ってくることとなる。
 一通はお断りの文言が書かれてあり、もう一通は差出人不明のもので「満月の夜が明ける頃、連れて行きます」とだけ書かれてあった。
 どちらがアズター本人の返事かをすぐに判断し、宣言通りその頃合いにカルロスは迎えに出て、黒精霊に取り囲まれている親子の元へ飛び込んでいくこととなる。

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