凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「ルーリアが家を出たことはいつまで隠し通せるのか。バレたら大丈夫そうだな」

 カルロスはルーリアが伯父夫婦の屋敷の裏にある粗末な小屋に閉じ込められていたことなど知らない。バレるまで時間の問題であることも想像すらしていないため、気軽な口ぶりでそんなことを呟く。
 続けて「遅いな」と文句を口にしつつ時計に目を向けるとガチャリと扉が開き、カップ片手に鼻歌を歌いながらエリオットが部屋に入ってきた。

「カルロスじゃないか。確か、お前今日は非番だったよな、どうした?」
「書類にサインをお願いしたくて来ました」
「急ぎか。わかった」

 ソファーから立ち上がったカルロスが机に向かったため、エリオットも自然と足早になる。

「いったいなんの書類だ」
「婚姻契約書です。認め人のところにサインを」

 飲み物を口に含んだ後に、カルロスの口から飛び出した衝撃の台詞に、エリオットは激しくむせ返った。

「こっ、婚姻って、お前っ、いったい誰と……ルーリア・バスカイル!?」

 問いかけながらエリオットの視線は、机上に広げて置かれた婚姻契約書へ向けられる。自然と新婦の欄を確認し、そこに書かれてあった名前にさらに大きな声をあげた。そしてゴホゴホと苦しそうに咳き込む。

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