凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
エリオットは婚姻契約書をカルロスに手渡すと、代わりに五角形の小箱を手に取った。中に入っている魔法石をじっと見つめた後、固い声音で感じたことを告げる。
「闇の魔力か」
「闇の魔力の他に、光の魔力、それとごく僅かだが水の魔力の残滓を感じる。闇と水は同一人物のものだと思われます。魔力紋から、どこの一族の者か割り出して欲しい。もちろん内密で」
「これは、新妻と何か繋がりが?」
それにカルロスは澄まし顔で肩を竦めてみせた。否定しないということは肯定と捉え、エリオットはニヤリと笑う。
「面白そうだな。引き受けた」
「恩に着ます」
カルロスはいつの間にか丸めた婚姻契約書を軽く掲げると、微笑みを浮かべて執務室を出て行った。
「いい顔しやがって」
滅多に見られない美麗な微笑みにエリオットは苦笑いする。そして、すぐさま扉がノックされたため、「どうぞ」と答えながら小箱を机の引き出しに隠した。
+ + +
カルロスから大きく遅れて食事を終わらせたルーリアは、自室に戻ってぼんやりと窓の外を眺め続けていた。
「とても綺麗なお庭。きっとセレットさんが心を込めてお世話をしているからね」
花壇によって咲いている花の色が違うため目で楽しめ、わずかに開けた窓からは花の香りや、噴水から湧き出る水の音、鳥の囀りもしきりに聞こえてくる。
今まで生活していた小屋の窓から見えたのは屋敷と高い壁と薄暗く手入れもされていない裏庭。