凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
(私の分の朝ごはんがあったなら、そろそろ私がいないことを知られているかもしれない)
もしそうなら、ディベルとクロエラは焦りと怒りで大騒ぎをしているに違いない。
(お父様たちに被害が及んでいないと良いけど……でも、私が婚姻を結んだことを知ったら、確実にカルロス様に多大な迷惑をかけてしまうわね)
申し訳ない気持ちになり、ルーリアが瞳を伏せた時、扉がノックされ、エリンが「奥様、少し宜しいですか?」と声をかけてきた。
ルーリアが慌ててエリンの方へ歩み寄ると同時に、エリンに続いて白衣姿の男性が部屋に入ってきて、ルーリアに対して頭を下げた。
「紹介しますね。夫のレイモンドです」
「レイモンド・ファーカーです。このような格好ですみません。本日の仕事場が騎士団の厩舎でして、すぐにまた戻るため着替えていないので少し臭うかもしれません」
まったく気にならないルーリアはふるふると首を横に振ってから、同じように頭を下げ返す。
「ルーリア・バスカイルです。こちらこそよろしくお願い致します」
「あらやだ。今頃坊ちゃんが婚姻の契約を締結させています。だからもう、ジークローヴですよ」
即座に訂正を入れられ、ルーリアはハッとさせられる。
(夫婦になろうと思わなくていいと言われてはいても、形式上はカルロス様の妻なのだから気をつけないと)
責任を感じてぎこちなく苦笑いすると、思い出したようにエリンがレイモンドへと問いかける。
「屋敷の回復薬、まだ残ってた?」
「ああ。ふたつほど持っていくよ。でも屋敷の在庫が残り少ないから、忘れずに買い足しておくか、カルロス坊ちゃんに生成をお願いしておいた方がいい……それでは奥様、また改めてご挨拶させてください」