凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
レイモンドは穏やかに微笑んでから部屋を出ようとしたが、「ああそうでした」と改めてルーリアへと体を向けた。
「バスカイル家の魔法薬は本当に素晴らしいものですね。何度馬や動物たちを助けてもらったことか」
「……ほ、本当ですか? そう言ってもらえて嬉しいです。ありがとうございます」
バスカイル家の魔法薬であれば自分も生成に関わっていたため、褒めてもらえたことが嬉しくてルーリアの声がわずかに震える。
レイモンドは「失礼します」とひと言断ってから、部屋を出て行った。エリンはふたりっきりになったところで、張り切るように声を弾ませる。
「屋敷の中を案内する前に、まずはこちらへ!」
楽しそうに歩き出したエリンを、ルーリアは追いかけた。カルロスの部屋の前を通り過ぎ、その隣の部屋の扉をエリンは押し開け、室内へと入っていく。
ルーリアも様子を窺いながら中へと足を踏み入れた。広さはルーリアが使っている部屋より少し狭いが、室内にはまた扉があり、エリンはそこへと真っ直ぐ進んでいく。
エリンによって開け放たれた扉の向こうを覗き込めば、たくさんのドレスや靴や宝飾が並んでいて、ルーリアは「わあ」と思わず声をあげる。
「すべてお古で申し訳ないのですが、宜しかったら、こちらからお好きなものを選んでくださいな」
「こんなにたくさん。どなたのものですか?」
「カルロス坊ちゃんの妹のカレンお嬢様のものです。お嫁に行かれる際に置いていかれました。奥様の方が小柄なので少し大きいかもしれませんが、新調されるまでの繋ぎくらいにはなります」