凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 手近にあった簡素なドレスに触れれば、柔らかで滑らかな生地の感触が感じ取れて、ルーリアにはやはりお古になど見えない。

「……こんなに高価なものを勝手にお借りして良いのですか?」
「ずっと取っておいたのですが、一ヶ月ほど前にカルロス坊ちゃんからすべて誰かに譲ってしまえと言われて、その準備に取り掛かろうとしていたところなので問題ありません。奥様はどのようなものが好みですか?」

 今まで与えられた物を着るという選択肢しかなかったため、好みや希望を聞かれてもまったく言葉が浮かんでこない。固まってしまったルーリアに苦笑いを浮かべてから、エリンがいくつかドレスを手に取った。

「そうですね。こちらのドレスなんてどうでしょう、もしくはもう少し飾り気の少ないこれとか、ああこちらも似合いそうです」
「……どれも可愛いです」

 ルーリアはエリンが見立てた物の中から、腰の後ろに大きなリボンがひとつある程度の飾り気の少なく動きやすい水色のドレスを選んだ。
 その場でそれに着替えてから、ルーリアはエリンに屋敷の中を案内してもらう。
 二階はいくつも部屋があるが使っているのはカルロスとルーリアのいる部屋だけだと説明を受けてから、階段から一階へと降りた。
 先ほど食事をした食堂に炊事場、食堂の二倍ほどの広さがある居間、エリンたち夫婦の部屋、浴場に手洗い場など見て回る。

「どこに行ってもしっかりと結界が施されてて、カルロス様はすごいです」

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