凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「俺は最初からお前らに許可など求めていない。ルーリアを嫁にもらうとはっきり書いたはずだ。それは文字通りの意味でしかない。なぜ理解できない」
コツコツと靴音を響かせながら屋敷の中に入ってきたカルロスから鋭く睨みつけられ、クロエラは息をのむ。
カルロスは倒れている男のそばで震えているルーリアを自分の元へと引き寄せた。
「ルーリアを手放す気はない。もし、お前らが彼女を連れ去ってどこかに隠すことがあれば、バスカイル家を潰す。俺の妻を狙う者は許さない。一人残らず命を奪い取る」
不敵な笑みを浮かべたその顔はゾッとするほど美しいのに、命を狙うその様子は騎士団の黒い制服と相まってまるで死神のように見えてくる。
ルーリアは目に涙を溜めたままカルロスを見上げると、カルロスもすぐにルーリアへと視線を落とした。そして、ルーリアの左頬がわずかに腫れていることに気付いた瞬間、カルロスは躊躇いなく鞘から剣を抜き去る。
「すこぶる気分が悪い。悪いが、俺は女だろうと容赦しない。これ以上俺たちの視界に留まり続けるなら斬り殺す」
カルロスが剣先をクロエラに定めると、クロエラは小さく悲鳴をあげ、逃げ惑うようにして屋敷から逃げ出す。残された男たちはカルロスから睨みつけられると慌てて走り出し、倒れている仲間をふたりで支えるようにして屋敷を出ていった。
「カルロス様、ありがとうございます……ここにいられることが、すごく嬉しい」
ルーリアの目から流れ落ちた涙をカルロスは指先で優しく拭ってから、そっとルーリアの顎を持ち上げて、痛々しい腫れを悔しそうに見つめる。