凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
カルロスに声を掛けられ、ルーリアは「はい」と小さく返事をし、彼の後ろに続く形でエリンと並んで歩き出す。しかし数歩も進まぬうちに、「いやああ」と女性の悲痛な悲鳴が聞こえてきた。
何事かと辺りをキョロキョロ見回し、ルーリアは自分より少し年上だろう女性三人の姿に視線を留める。
「カルロス様が結婚したというのは本当だったのね!」
「信じたくない! 誰なのよ、あの女!」
「私たちのカルロス様が、あんな地味女を選ぶだなんて!」
嫉妬に満ちた言葉にルーリアは息をのむ。思わず足を止めかけたものの、素早くカルロスに手を捕まれ、そのまま目の前にある小じんまりとしたお店の中へと入っていった。
「ああいった言葉に耳を貸す必要はないからな」
カルロスはきっぱりとルーリアにそう告げてから、「お待ちしておりました」と朗らかな笑顔で近づいて来た男性店主へと体を向ける。
「坊ちゃんの言う通りですよ。ただの醜い嫉妬です。お気になさらないでくださいね」
続けてエリンにもそう声を掛けられ、ルーリアは「はい」と頼りない声で返事をしたが、重苦しい感情が心の中では渦を巻き始める。
(カルロス様は素敵な方だもの。たくさんの女性から好意を向けられていたって、何もおかしくない……おかしいのは、こんな私がカルロス様と共にいることの方よね……私もアメリアのような華のある人間だったら良かったのに)
魔力の暴走の兆しを感じたわけではないが、ルーリアは持っていたバッグの中から変わらず輝き続けている魔法石を取り出し、軽く握りしめた。
振り返ったカルロスは、ルーリアの様子を見て、ぽつりと呟く。
「持って来ていたのか」
「もちろんです。おふたりに迷惑をかけないためにも、私は魔法石を肌身離さず持っている必要がありますし……それとカルロス様の魔力に触れているとすごく落ち着きます」