凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 近くにいた男性へとアメリアは尋常じゃない力で襲いかかっていき、エリオットの指示で、騎士団員たちは取り押さえにかかる。

「バスカイルは妹も闇の魔力を宿しているじゃないか! もしかして一族全員、闇の魔力に通じているんじゃないだろうな」
「そんな訳あるか! バスカイル家は光の魔力の名家だぞ!」

 男性から詰め寄られたディベルは唾を飛ばしながら言い返し、クロエラは「アメリア、正気に戻って!」と騎士団員を押し退けるようにアメリアへと近づいていく。しかし、アメリアは呼びかけに反応せず、クロエラの腕に爪を立てて加減なく引っ掻いた。
 クロエラの悲鳴が上がる中、ルーリアは自分ににじり寄ってくる黒精霊へと警戒の眼差しを向ける。

「エメラルドの姿は見当たらないな。どこにいる」

 カルロスの呟きを耳にし、ルーリアも周囲を見回すが、やはりヴァイオレットそっくりの姿は見つけられない。

『あなたにも闇の魔力に蝕まれた者たちを救う存在になってもらうはずだった』

 不意にヴァイオレットの言葉を思い出し、ルーリアは黒精霊たちへと視線を戻した。すると、黒精霊たちの姿が今までと違うものに見えてくる。

「もしかして、私を捕らえて襲おうとしているのではなく、助けを求めている? みんな元は普通の精霊のはずで、我を無くしているように見えるけれど、心の奥底では自我が残っていて、元に戻りたくて私に助けを求めているとしたら」

 ルーリアはカルロスと視線を通わせてから、自分の中に確かに生まれた気持ちを少し緊張気味に言葉にした。

「光の魔力でみんなの闇を祓ってあげたい。私にできるでしょうか」
「ヴァイオレットから祝福を受けているんだ。ルーリアならできる」

 カルロスの力強い微笑みと、信じてくれているとわかる眼差しに、ルーリアは勇気をもらう。
 そして、ヴァイオレットがそうしたように、ルーリアも胸元で手を組み、目を瞑った。

< 215 / 229 >

この作品をシェア

pagetop