凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 そう言われて、ルーリアもアズターに連れられてカルロスの元へ向かったあの夜を思い返す。ずいぶん昔のように思えてきて、自分の人生が一変した大切な思い出に胸を熱くさせ、口元を綻ばせる。

「結婚式はいつなんだ。それとも子供が先か?」
「用は済んだので失礼します」

 ニヤリと笑ったエリオットからの質問に、カルロスは真顔となり、ルーリアの手を掴んで執務室を後にした。
 すれ違う騎士団員たちから挨拶を受けつつ、のんびりとした足取りでふたりは騎士団の詰め所を出た。
 今日は屋敷からここまで歩いてきたため、街の様子を眺めたり、店からふわりと届いた美味しそうな匂いにつられて寄り道したりしながら、やがて木漏れ日の模様を綺麗に浮かび上がらせた小道へと手を繋いだまま入っていく。

(いつまでもこうして、カルロス様と一緒にいたい)

 強くそう望み、ここ一ヶ月、心の中で渦巻いている不安に終止符を打つべく、ルーリアは足を止める。

「カルロス様!」

 意を決してルーリアがカルロスと向き合うと、カルロスも同じような神妙な面持ちでルーリアを見つめ返す。

「私、もう闇の魔力はありません」
「わかってる」
「無くなったら、私を解放すると」
「確かに言った」

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