凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「ルーリアさんには本当に助けてもらっているな。それに見合った給与を与えなければいけないと思っているし、実際、そういう声も上がっている。騎士団の職員として籍を置いてしまったらどうだろう。レイモンドのように」
ルーリアはあの後から、なかなか自我を取り戻せない黒精霊や穢れ者たちが早く元に戻れるように治癒や浄化の手伝いを精力的にしているのだ。
エリオットはすぐに提案に乗ってくるだろうと踏んでいたが、予想に反し、ルーリアは表情を曇らせる。
「お話はありがたく、光栄なのですが……今の自分にはまだ抵抗があって、全員と平等に向き合って治癒を行えない状態です。だから仕事としてお引き受けするのは難しく……ごめんなさい」
歯切れ悪く言葉を並べたが、エリオットにはルーリアの言葉の意味するところはしっかりと理解できていた。
アメリアとクロエラは、結局自我を取り戻せない状態のままなのだ。ふたりと向き合うと、ルーリアはどうしても体が震えてしまう。
穢れ者にならずに済んだディベルが、一度だけジークローヴ邸を訪ねてきて、「元に戻してやってくれ」と頼み込んできたこともあり迷いはしたが、ルーリアはやっぱりふたりの元に赴くことはできないでいる。
「構わないよ。あのふたりの優先順位は俺の中でも低いから。職員として働くことを前向きに考えてくれ」
食い下がられて、ルーリアが困り顔となってしまったため、カルロスが話の流れを変える。
「伯父は警戒しておいた方がいいです。わずかに魔力の核に闇の魔力が感じられた。新しい闇の魔力の使い手を生むことだけは避けたい」
「わかった」とエリオットは返事をしてから、時々視線を通わせつつ寄り添うように立っているカルロスとルーリアを見つめて、柔らかく笑う。
「それにしても、ここにお前が婚姻契約書を持ってきた日が懐かしく感じるな」