凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
ひとりになると自分に向けられる視線がさらに多くなったように感じ、カルロスは遠い目をした後、真っ直ぐに王妃へと目を向け、表情を引き締めた。
まとわりつく視線は不快で嫌ではあるが、王妃のいる大広間の警備の責任者を任されているため、冷静さを欠くわけにいかない。
……そんなことわかっていたはずなのに、大広間入り口で起きたわずかなざわめきに目を向けた瞬間、カルロスの思考が数秒停止した。
入ってきたのはバスカイル家の一行だった。事実上一族の実権を握っているディベルと、虹の乙女となったアメリアのふたりに父親のアズターが続き、周囲の人々はアメリアに視線を向けているが、カルロスは違った。
三人の後ろを控えめに歩く女性の姿だけが、カルロスの目には映っていた。
はちみつ色の髪も、圧倒されるように大広間の様子に目を奪われている面持ちも、背は伸びても華奢な体の線も、すべてがカルロスの記憶の中にいる彼女と一致している。
「……ようやく見つけた」
女性は三人に続いて歩いていく。周囲を見回していた彼女の瞳が不安そうに揺れたのを目にした瞬間、カルロスの足が自然と動き出していた。