凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 時は戻り、バスカイル家の敷地内にひっそりと存在する薬草の匂いに満ちた小屋の中、簡素なドレスを身に纏っている色白の女性が、粗末なベッドに腰掛けていた。
 腰まで伸びたはちみつ色の髪、それと同じ色の瞳は、修繕が必要なほどに浮き上がった床板部分をただぼんやりと見つめている。
 赤子だったルーリアも、あとひと月で十七回目の誕生日を迎える。美しく整った顔立ちをしているが表情には力がなく、ほっそりとした体つきはあまり健康的に見えず、まるで病人のようだ。

 庭から聞こえてくる小鳥の囀りに耳を傾けていると、砂利を荒々しく踏み締める幾人かの足音が聞こえてきた。ルーリアは反射的に小屋の扉へと視線を移動し、緊張感を抑えるように軽く唇を引き結んだ。
 普段この場所には、魔法薬の材料や粗末な食事を運んでくる侍女くらいしか近寄らないのだが、今この場に向かっている人々はおそらく彼女たちではない。

 程なくして、入室の断りもなく扉が開けられ、まず入ってきたのはルーリアの父親、アズターだった。
 約半年ぶりに見たその姿に、思わずルーリアは口を開きかけた。しかし、続いて父の兄と姉にあたる伯父のディベルと伯母のクロエラが室内に姿を現したため、出かかった言葉を慌てて飲み込んだ。

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