凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「そろそろ時間だ。準備をしろ」

 前置き代わりの気遣いの言葉ひとつなく、アズターが用件だけをルーリアに言い渡す。
 続けてやって来た三人の侍女のうちのひとりが、多少古めかしいものの上質な生地であつらえてある水色のドレスを両手で抱えているのを確認して、ルーリアは「はい」と不安に震えながら小さく返事をする。

 ベッドから立ち上がったルーリアへと侍女たちが歩み寄ると同時に、アズターとディベルが小屋の外に出た。特に言葉を発する訳でもなくただ淡々と、ルーリアは侍女たちの手によって身支度を整えられていく。
 いつもとは違う質の良いよそ行きのドレスに、薄くとも初めて施す化粧。きちんと纏められた髪には、青く輝く魔法石が使われた上品な髪飾りを添え、首からは小さくとも透明度の高い石がひとつだけ使われた簡素なネックレスを下げた。
 今日この日でなければ、着飾れることに心も弾んだだろう。しかし、髪飾りからは大きな魔力を、ネックレスの小石からも微弱な魔力を感じ取って仕舞えば、ルーリアの顔は恐怖と緊張で強張り続けた。

< 5 / 229 >

この作品をシェア

pagetop