凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
(先ほどお父様が言いかけたのは、この事だったのね)
思いも寄らぬ縁談話だとは言え、自分を気に入ってくれてのことならば嬉しくはある。しかし、嫁に行くというのはこの場所から離れることを意味していて、不安と戸惑いの方が正直大きい。
ルーリアが困ったような表情を浮かべると、それに気づいたクロエラが鼻で笑う。
「やだ、なんでそんな顔をしているのよ。たとえどんなに縁談の話が舞い込んできたとしても、あなたを嫁になんて出せないわ。少し考えればわかることでしょう?」
「やだお姉様、いつかお嫁に行けるなんて思っていたの?」
当然だとばかりにクロエラから告げられてルーリアはわずかに目を見開き、続いたアメリアの言葉に瞳を伏せた。
これまでルーリアは自分が誰かの元に嫁ぐなんていう夢も期待も抱いたことはなかった。自分の状態を考えれば当然のことだ。
しかし、先ほどのアズターのひと言で、これまで一度も思い描いたことのなかった人生を、これから進んでいくことになるかもしれないと思ったのだ。
(さっき、お父様は上手くいけばって仰っていた。もしかして、嫁に出そうというのはお父様だけの考えで、これから伯父様たちを説得しようとしているの?)
アズターからかけられた言葉を思い返し、ルーリアはそんな予想を立てた。
しかし相手は伯父夫婦だ。考えが違うふたりを納得させることなど出来るはずがない。
もし仮に納得させることができて、ルイスの元へ嫁いだとしても、黒精霊から受けた祝福のせいで、いずれ彼らに多大な迷惑をかけるのは想像に容易く、ルーリアはアズターの考えに賛成できない。