凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「おかげで今朝は魔力を暴走させずに済みました。ありがとうございます」
「魔力の暴走とやらは毎朝のことなのか?」
「はい。最近はほぼ毎朝、伯父様と伯母様に迷惑をかけてしまっていて……」

 カルロスからの疑問に答えるものの、怒声を浴びさせてきたディベルや、叩いてきたことも何度かあったクロエラの姿を思い出してしまい、ルーリアは一気に顔色を変えて言葉を途切らせる。
 彼から先を促すような眼差しを向けられても、ルーリアはその先を続けられず、視線から逃げるように顔を逸らすと、ベッドの上のランタンへと手を伸ばし、魔法石を確認した後「良かった割れてない」とほっとした様に呟いた。
 口を閉ざしてしまった彼女にカルロスは小さくため息をつく。そして窓の外から庭を見下ろせば、花壇の近くに立っていたエリンと老精霊のセレットが、見上げるようにしてカルロスへと顔を向けてきた。
 セレットは意味ありげに微笑み、エリンは片手で頭を支えて少しばかり不満そうな様子をみせてから屋敷に向かって共に歩き出す。
 カルロスはそんなふたりを見下ろしながら面倒そうに顔を顰めたあと、ルーリアへと体を向ける。

「朝食の準備ができたようだ。ついでに同居人たちにもルーリアを紹介するから、共に食事をとろう」

 促されてベッドを降りたが、ルーリアの足はそこから先に進まない。しばらく躊躇った後、思い切るように口を開いた。

「……あの、カルロス様。その前に少しだけ良いでしょうか」
「なんだ?」
「王妃様の誕生日パーティーだけでなく、子供の頃も、黒精霊から助けてくださってありがとうございました。本来ならもっと早くお礼を言うべきだったのに本当にごめんなさい」

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